周防灘と筑紫山地にほど近い、大分県中津市の10ヘクタールを超える広大な敷地に、聖ヨゼフ寮は建築された。カトリック・サレジオ修道会が母体であり、敷地内には修道院も点在する。かつては学校もあり、地域からはドンボスコ学園の名で親しまれている。
多様化する児童養護施設の処遇理論の中、聖ヨゼフ寮もまた独自の手法で児童を育ててきた。スタッフとのディスカッション、他施設への見学、設計者の施設研修など約2年間かけて行われた設計ヒアリングのなかで、この場所での進むべき建築の方向性を模索していった。個のスペースの充実化を図る一方で、大勢の大人が大勢の子供を育てられるようなどこか牧歌的な建築のイメージであった。
中庭を囲むコの字型の母屋(児童園舎A・B棟、事務棟、厨房棟)と2棟の離れ(多目的ホール、チャペル)を、かつての旧園舎とほぼ同じ位置に配置した。住宅的スケールを保つため、ヴォリュームを細分化してリズミカルに片流れの屋根をかけた。児童園舎には心理的効果を考慮し、地下のデン、屋根裏のロフトといった一時的に集団から離れて落ち着けるスペースを設けた。
日田杉などの杉の産地がほど近いことから、構造体から造作にいたるまで杉材を多用している。特に床材には30mm厚の無垢の杉フローリングを採用した。また、リビングのソファ、テーブルや児童居室のベッド、学習デスクなど、子供が日々使うものほど手触りや素材感を重視し、特注の家具とした。
透き通るような自然環境のもと、ゲニウス・ロキ(=地霊)に守られながら、普遍的なものを失わずに聖ヨゼフ寮が進化していくことを願うばかりである。

構造規模 木造在来構法 一部RC造
地下1階、地上2階
敷地面積 10,613.76m2(ドンボスコ学園全体 101,084.73m2
建築面積 1,228.74m2
延床面積 1,302.96m2
地階  29.81m2
1階  1,038.94m2
2階  234.21m2
アプローチ側より建物全体を見る。